タヌキの溜め糞に含まれるサクラの種
こちらは個人的に調査していたタヌキの溜め糞に交じっていたサクラの種子です。タヌキは雑食なので、昆虫や動物の死体から木の実まで様々なものを食べています。そうした食べ物の中に、サクラの実が含まれていたようで、種子の部分だけ消化されずに糞と一緒に散布されていました。この種子がどれくらい発芽するのか気になった僕は、この場所に目印を立てておき経過を観察することにしました。
1年後見事に発芽したサクラ(赤丸)
そして1年後、様子を見に行くと、なんと30個近い実生が発芽しているのが確認できました。固まっていた種子は、風雨の影響でやや拡散していましたが、確かに溜め糞の周囲で密集して発芽している様子が確認できました(写真・赤丸)。動物が森を広げている姿を実際に見ることができたので、非常に興奮しました!教科書で動物散布型の種子があるとは知っていても、それを実体験として見ることができる機会は滅多にないと思いません。
別の場所でもサクラが密生していた
同じく、密生するサクラの実生
他の調査地内でも、密生するサクラの実生が何カ所か確認されました。これらの実生を発見した場所も、風雨で偶然種子が集まるような地形でもないため、動物が食べた種子が糞と一緒に集積された結果生じたパターンだと推測されます。動物と植物の関係は、動物が植物を利用してばかりというイメージを抱く人も多いかもしれませんが、こうした光景を見ると、植物も動物を何とか利用できるように進化を遂げてきたのだなあと実感します。
虫に食われているサクラの実生
さて、こうしてめでたく芽が出てきたサクラたちですが、早速新たな敵と戦っている個体もありました。それが上の写真です。虫にお手本のような虫食い穴を開けられています。昨年1年間の観察結果では、春に発芽した実生の多くが秋までに枯死していることが分かりました。枯死因は不明なことが多かったのですが、この食害のように天敵の影響によって枯死してしまった個体も多かったのではないでしょうか。
調査中に見つけたもの
ここからは調査中に見つけたものをご紹介します。まず一つ目が、トチノキの実生です。トチノキは栃木の栃で、手のひらを広げたような大きな掌状複葉が特徴の木です。母樹レベルにもなると、両手がいっぱいになるほど葉が大きくなる種ですが、実生はまるで赤ちゃんの手のようにミニサイズで可愛らしいです。
この個体もあと数mズレていれば、プロット内に出現した新規個体として記録できたのですが、残念ながら今回は調査対象外になってしまいました。トチノキの実生は、私の調査地では非常に珍しいので、頑張って欲しいです!
トチノキの実生
続いてはヒメシャラの巨木です。ヒメシャラと言えば、温かみ溢れる良い色の材が思い浮かびますね。材の美しさと同様、ヒメシャラは樹皮の美しさでも日本の森のトップ層に入っていることは間違いないでしょう。どんなに薄暗い森でも、ヒメシャラだけは一瞬で判別できます。サルスベリの木肌にも似ていますが、ヒメシャラはツバキ科、サルスベリはミソハギ科で異なります。名前の由来は、ナツツバキの別名であるシャラの木の花よりも、一回り小さい花を咲かせるためだそうです。
調査中に見つけたヒメシャラの巨木
そんなヒメシャラの巨木を調査中に見つけました。あまりの太さに周りの木が細く見えてしまいますが、周りの木も胸高直径30㎝程度はある立派な木です。あいにく、直径メーターを持っていなかったので、計測することができなかったのですが、大人二人でようやく一周できるぐらいの幹の太さでした。もはや、ヒメと言うよりも皇帝と呼んだ方がしっくりくるサイズですね。
ナンテンの展葉
続いてナンテンの展葉です。ナンテンは以前お話したように、奇数羽状複葉という一見複数枚に見える葉っぱの全体が、実は一つの葉っぱであるという特徴を持っています。そんな大きな葉っぱが春先に生えてくる場面は、どのようになっているのでしょうか?非常に気になりますよね!そう思って観察してみたところ、写真のようになっていました。確かに、枝のような部分も葉っぱのような部分(小葉)と一緒に大きくなっている過程が分かりますね。

